治験とは?

治験とは

治験コーディネーターの「治験」とは、どのような意味なのか正しく理解していますか? 治験コーディネーター(CRC)になるためには、治験とは何かを正しく理解しておくことが必要です。

治験とは、新しい医薬品の開発に必要なデータを収集するための試験のことです。具体的には、製薬メーカーが開発した新しい薬(治験薬)を患者や健康な人に投与し、その効果や安全性を検証するための試験のことです。この試験を通じて、厚生労働省から医薬品としての承認を得ることが目的です。

面接の際には、治験について説明を求められることも多いです。このページでしっかり勉強しておきましょう。

治験治験とは?

治験コーディネーターの「治験」とはどのような意味でしょうか。

治験とは、新しい薬を開発する際に、厚生労働省から薬としての承認を受けるために必要なデータを収集する臨床試験のこと。

CHECK治験の定義

治験とは、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の第2条で、「治験とは、承認申請に提出すべき資料のうち、臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実施をいう」と定義されています。

また、第80条の2において、「厚生労働省で定めた基準に従って、治験を依頼・実施・管理しなければならない」と治験の取扱いについて定められています。

薬ができるまで

新しい薬を開発するためには、動物で薬の候補となる物質の効果や毒性を調べるだけでなく、人間での有効性(効果)や安全性(副作用)を確認する必要があります。

人間での有効性や安全性について調べる試験を「臨床試験」と呼びますが、その中でも医薬品の承認のために必要なデータを収集する臨床試験のことを「治験」と呼びます。治験は厚生労働省が定めた規則(医薬品の臨床試験の実施基準:GCP)に従って行われます。

治験を行う医師は、患者に治験の内容を詳しく説明し、患者は治験の内容を十分に理解した上で、自らの意思で治験への参加に同意することが必要です。

以下では、それぞれの項目について解説します。

新薬の開発プロセス 治験のプロセス 治験の位置づけ 治験の成功率 新薬の上市数の推移 治験が行われている領域 治験が抱える問題点 治験の規則 治験と治療の違い 治験参加のメリット インフォームド・コンセント

薬新薬の開発プロセス

新薬の開発には10年以上の長い期間200~300億円の巨額な費用がかかる。

日本では毎年、約40~50種類の新薬が誕生しています。新薬の開発には10年以上の長い期間と200~300億円の巨額な費用がかかると言われています。最初にスクリーニングされた物質が実際に薬となる確率は約6000分の1と言われています。

新薬は以下のようなプロセスを経て完成します。

基礎研究
(2~3年)
自然界から薬になる可能性のある物質を探したり、科学的に作り出したりします。
最近はバイオテクノロジーやAIの進歩により、コンピューターを使用して物質の立体構造を予測し、薬の候補を作ることができるようになってきました。
研究その物質が薬になるかどうかを、試験管の中で実験します。
前臨床試験
(3~5年)
動物で試験を行います。
試験ネズミやウサギ、イヌ、サルなどの動物を使って、薬の候補が動物の体内でどのように吸収、分布、代謝、排泄されるかを調べます。そして、薬として期待される効果があるかどうか、副作用はないかなどを検討し、候補を絞り込んでいきます。
安全性試験の実施方法や記録については、その試験結果の信頼性を確保するためにGLP(Good Laboratory Practice)という実施基準が定められています。日本では、「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施基準に関する省令」が厚生労働省から通達されています。
治験
(3~6年)
人間で試験を行います。
治験動物で試験した結果、効果と安全性が確認された物質だけが新しい薬の候補となり、人間での臨床試験に進むことができます。これが「治験」です。詳しくは以下で説明しますが、治験コーディネーター(CRC)が関わる部分になります。

詳しくはこちら治験の流れ

厚生労働省の承認&新薬の市販
製造販売後
臨床試験

(2~10年)
薬が市販された後、より多くの患者の治療に使用された際の効果や安全性を確認します。
調査治験と呼ばれませんが、治験と似た規則のもとで行われます。

治験治験のプロセス

治験は以下の3つの段階に分かれており、各段階で薬の安全性や有効性を検証します。各段階(第一相、第二相、第三相)の被験者数の比率はおおよそ1:3:6で、後の段階に進むほど人数が増えます。

治験のプロセス

第一相試験
主に健康な男性を対象とした試験です。100人程度の健康な成人を対象に、ごく少量から徐々に薬の候補物質の投与量を増やし、主に安全性を調査します。
動物での実験結果があっても、人間を対象に再度調べることが必要です。動物では効果が見られたとしても、、人間でその効果が見られない場合や、逆に、動物では見られなかった副作用が人間で現れることがあります。
人体における安全性が未確認であるため、通常は妊娠の可能性のある女性は参加できず、男性が主に対象とされます。
がんなどの治療不能な重篤な疾患の第一相試験では、被験者は初めから患者となります。
治験専門クリニックで行われることが多く、平日だけでなく、多くの被験者が休日を取得できる土日にも実施されます。
第二相試験
通常、200~300人程度の少数の患者を対象とした試験です。薬の候補物質が効果を示すと予測される比較的少人数の患者を対象に、有効性、安全性、用法・用量を調査します。
第三相試験の次に治験コーディネーター(CRC)が担当することが多い試験です。大学病院などの大規模な病院で行われることが多いです。
国際共同治験の場合、海外のデータを利用して一部を省略できる場合があります。
第三相試験
大勢の患者を対象とした試験です。実際の治療に近い状況で薬の有効性、安全性、用法・用量を確認し、既存薬との比較を行います。
近年は国際的に、数万人から数十万人規模の患者を対象とした試験が増えています。
プラセボ(偽薬)を使用し、データの偏りを最小限に抑える「二重盲検ランダム化比較試験」が基本的に行われます。
治験コーディネーター(CRC)が主に担当するのはこの第三相試験です。 大学病院から専門クリニックまで、多くの全国の医療機関で治験が行われます。

グローバル治験のプロセス

厚生労働省の承認&新薬の市販
第四相試験
(製造販売後
臨床試験)
厚生労働省の承認を受けた後に行われる、薬の安全性を確認するための試験です。GCP・GPSP省令に基づき実施され、市販後臨床試験とも呼ばれます。市販後調査(PMS)を通じて行われることが多いです。
この段階は、治験とは呼ばれません。
市販後調査(PMS)は、新薬投与後の患者の状態を6ヶ月間に渡って調査する「市販直後調査」、治験の対象者とならなかった患者の有効性・安全性を調査する「特定使用成績調査」、長期的な使用実態を調査する「使用成績調査」に分類されます。製薬会社のMRやモニターが医師を訪問し、情報収集を行うことが多いです。

治験の位置づけ治験の位置づけ

人を対象とする医学的研究を「臨床研究」と言い、臨床研究のうち薬や治療法の効果や安全性を調べる試験を「臨床試験」と言う。臨床試験のうち医薬品や医療機器などを厚生労働省に承認してもらうために行う試験を「治験」と言う。

治験コーディネーター(CRC)は主に治験に関わりますが、特定臨床研究にも携わることがあります。

携わる業務範囲を明確に区別するため、治験に携わっている人を「治験コーディネーター」、臨床研究に携わっている人を「臨床研究コーディネーター」、臨床試験に携わっている人を「臨床試験コーディネーター」と呼び分ける場合があります。逆に業務範囲を区別しないときは「コーディネーター」とだけ呼ぶこともあります。

治験コーディネーターと臨床研究コーディネーターの違いについて知りたい方はこちら

臨床研究・臨床試験・治験の違い

種類 内容 職種
臨床研究 患者の病気の原因解明や治療の改善を目的とした研究。患者が直接研究に参加する「介入研究」と、検査データや血液サンプルの提供などを依頼する「観察研究」に分けられる。市販後調査(PMS)も含まれる。 臨床研究コーディネーター
臨床試験 臨床研究のうち、薬や治療法などの安全性と有効性を評価することを目的とした研究。製造販売後臨床試験(市販後臨床試験)も含まれる。関連法規はGCP省令、GPSV。 臨床試験コーディネーター
特定臨床研究 臨床研究のうち、製薬企業から資金提供を受けるもの、または未承認薬(日本で承認されていない薬)あるいは適応外薬(ある疾患に対しては承認されているが別の疾患への効能は承認されていない薬)を使用するもの。関連法規は臨床研究法。 臨床研究コーディネーター
治験 臨床試験のうち、薬や医療機器などを厚生労働省に承認してもらうための試験。この試験は、企業が主導する規模の大きな「企業治験」と、医師が主導する規模の小さな「医師主導治験」に分けられる。関連法規は薬機法、GCP省令。 治験コーディネーター

治験の成功率治験の成功率

治験の成功率は約8~10%

治験が成功する確率は、約8~10%と低いです。これは、残りの90~92%が失敗に終わることを意味します。

治験の各段階における成功率は、第1相は約65%、第2相は約43%、第3相は約42%であり、承認申請後に市販される確率は約75%です。

治験の成功率

※成功率は前臨床試験を終えた化合物を100とした場合
※成功率はBiotechnology Innovation OrganaizationSteven M. Paul et. al., Nature Reviews Drug Discovery 9, 203-214 などの論文を参考にCRCばんくが独自に作成。

新薬の上市数の推移新薬の上市数の推移

2021年に世界で販売が開始された新薬の数は、5年前と比べて2倍に増加した。

2021年に世界で販売が開始された新薬の数は、5年前と比べて2倍に増加しました。しかし、日本で販売が開始された新薬の数は、過去10年間ほど横ばいが続いています。そのため、2017年以降、日本で販売される新薬の数は、世界との差が広がったままです。

新薬の上市数の推移

※世界はIQVIA2022、日本は医薬産業政策研究所より出典
※世界はNAS(新規活性物質)、日本はNME(新有効成分含有医薬品)数

治験が行われている領域治験が行われている領域

治験が最も多く行われている領域はがん(オンコロジー)。コロナの影響で一時的にワクチンの治験も増加。

治験が最も多く行われている領域はがん(オンコロジー)です。従来の抗がん剤のほかに、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、さまざまな新薬が開発されています。その結果、がん(オンコロジー)領域の治験数は過去10年で3倍以上に増加しました。

薬物の治験計画届出件数の推移

PMDAより出典

治験が抱える問題点治験が抱える問題点

新薬の審査期間の短縮や国際共同治験の増加により、多くのドラッグ・ラグが解消され、2010年代前半までには治験の空洞化が大幅に改善された。しかし・・・

2010年より前は、日本の新薬の審査期間(審査ラグ)が主要国の中で最も長かったのですが、現在はトップクラスの短さとなっています。

実際に、CIRSの調査によれば、2009年時点で日本の新薬の審査期間は650日前後と長く、主要国の中では最下位でした。しかし、2010~2012年ごろにPMDA(医薬品医療機器総合機構)の審査官を増員するなどの取り組みの結果、2014~2016年には主要国の中で最も短かくなりました。

志望動機に「治験コーディネーター(CRC)になってドラッグ・ラグ(審査ラグ)を解消したい」と書く人もいますが、ドラッグ・ラグ(審査ラグ)の問題はすでに大幅に改善されているという事実を踏まえて、志望動機を見直すことをおすすめします。

日本の治験開始が海外に比べて遅れる開発ラグについても、2018年には国際共同治験の割合が50%を超え、製薬メーカーの合併も相次ぎ、グローバル化が進んだ結果、治験の空洞化はほぼ解消されました。

審査期間の推移

CIRS2019を参照。

国際共同治験の推移

患者数の少ない希少がんやゲノム医療、バイオテクノロジーといった先端分野で、新たなドラッグ・ラグと言われるドラッグ・ロス問題が発生!

2010年代後半からは、解消されたと思われたドラッグ・ラグが再び問題化しています。その原因は、薬価制度の見直しを繰り返した結果、日本の新薬開発市場への魅力が失われ、患者数の少ない希少がんやゲノム医療、バイオテクノロジーといった先端分野で、新薬が日本で開発されないケースが増えているからです。

特に抗がん剤という開発数の最も多い分野では、新興企業からの製品の増加により、日本での治験を省略するドラッグ・ロスが大幅に増加しています。

実際に、2016~2020年に米FDA(米国食品医薬品局)が承認した60品目の抗がん剤のうち、41品目が日本で未承認となっており、これは全体の約68%を占めます。また、未承認となった41品目のうち、約半数の22品目はバイオベンチャーなどの新興企業が開発した製品です。出典:ドラッグ・ラグ:なぜ、未承認薬が増えているのか?

このように、日本では先端分野の新薬開発に対するインセンティブが低く、海外で承認されている新薬が日本で承認されないまま放置されることで、患者にとって大きな不利益となっています。

ドラッグ・ロスを解消するためには、日本の製薬メーカーや研究機関が先端分野の新薬開発に積極的に取り組むことが必要です。また、政府や行政も薬価制度や規制環境を見直し、新薬開発市場へのインセンティブを高めることが求められます。

国別の未承認薬の割合

※2010~2021年の481品目を対象 ドラッグ・ラグ:日本と欧州の未承認薬状況の比較より出典。

企業別の国内承認率の比較

GCP治験の規則

治験は厳格な規則(GCP)に従って実施される。

治験を実施する際には、参加者の人権と安全性が最大限に保護されることが求められます。このため、「薬機法(旧薬事法)」という法律および厚生労働省が定めた厳格な基準(医薬品の臨床試験の実施基準:GCP)に基づき、治験の進行に関する厳格な規則が策定されています。主要な規則は以下の通りです。

CHECK治験を実施する際の規則

  • 治験の内容を国に届け出る
  • 治験審査委員会で治験の内容を事前に審査する
  • 治験に参加することに同意した患者だけを治験に参加させる
  • 重大な副作用を国に報告する
  • 製薬会社は治験が適切に進行しているかを確認する

別の記事でも詳しく説明していますので、さらに知りたい方はそちらもご覧ください。

詳しくはこちらGCPについて

クエスチョンマーク治験と治療の違い

治験と治療は異なる点がある。

治験と一般的な治療とはどのような違いがあるのでしょうか。以下にいくつかの主な点をまとめましたので、ご確認ください。

治験 治療
厚生労働省の承認を得ていません。※プラセボを除く 使用される薬 厚生労働省の承認を得ています。
試験が主な目的です。ただし、治療的な側面もあります。 薬を飲む目的 治療が主な目的です。
患者が希望しても、指定された病院でしか受けられません。 病院 患者が希望する病院であれば、どこでも治療を受けることが可能です。
治験担当医師(複数の場合もあります)が一貫して診察します。治験担当医師以外が診察することはありません。 医師 主治医以外の医師が診察することもあります。
一般的な治療よりも長い時間がかかります。 診察時間 一般的には短時間で終わります。
一般的な治療よりも細かな検査が行われます。 検査内容 健康保険の適用範囲内で行われる検査が主となります。

マル治験参加のメリット

治験参加のメリット

治験に参加すると、治験内容や医療機関の体制によっては多少の違いがありますが、おおむね以下のようなメリットが得られます。

CHECK治験に参加するメリット

  • これまでにない新しい治療を受けるチャンスがあります。
  • 経験豊富な治験担当医師による丁寧な診察を受けることができます。
  • 一般の診療に比べて、より細かな検査が行われるため、ご自身の病気の状態を詳しく知ることができます。
  • 治験薬の費用や、治験中の検査費用を支払う必要がありません。

そして、何よりもかけがえのないことは、「次の世代により良い薬を残すために協力する」という社会貢献ができることです。

iインフォームド・コンセント

インフォームド・コンセント

インフォームド・コンセントとは、治療を受ける前に自分の病気やその治療方針について医師やその他の関係者から十分な説明を受け、患者が説明の内容を十分に理解し納得した上で、患者自身の意思で治療に同意することです。

インフォームド・コンセントは一般的な治療でも行われますが、治験は試験的な性質があるため、参加者の人権を尊重し安全性を確保するためにも欠かせない手続きです。

インフォームド・コンセントで説明される主な内容は以下の通りです。

CHECKインフォームド・コンセントで説明される主な内容

  • 治験の目的、治験薬の使用方法、検査内容、参加期間
  • 期待される効果と予想される副作用
  • 治験への参加はいつでもやめることができ、不参加でも不利益は受けないこと
  • 副作用が起きて被害を受けた場合、補償を求めることができること
  • 担当する医師の氏名や連絡先
  • 治験に関する質問や相談のための問い合わせ先

別の記事でも詳しく説明していますので、さらに知りたい方はそちらもご覧ください。

詳しくはこちらインフォームド・コンセントとは

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