治験コーディネーター(CRC)の仕事の詳細

治験コーディネーター(CRC)の仕事の詳細

治験コーディネーター(CRC)の仕事内容は、GCP(治験を実施する際に遵守すべき基準)を守って適切に治験が行われるように、各部署を調整(コーディネート)することです。病院の患者様だけでなく、製薬会社や病院で働いている幅広い職種の方と接するお仕事です。

こちらでは「治験コーディネーター(CRC)って何をする人?」「治験コーディネーター(CRC)の仕事内容が分からない!」と悩んでいる治験コーディネーター(CRC)を目指す方々のために、治験コーディネーター(CRC)の仕事の詳細を「現役の治験コーディネーター(CRC)の声」や「現場の裏話」などを織り交ぜながら分かりやすく解説しています。

少しでも治験コーディネーター(CRC)の仕事内容の理解が進み、一人でも多くの治験コーディネーター(CRC)が誕生することを期待しています。

01治験が始まる前の事前準備

治験コーディネーターの仕事は治験の準備から始まります。

新しく始まる治験の内容を覚えます。その後に病院の関係者へ治験の内容を伝えます。

治験が始まる前の事前準備

勉強会(製薬会社の担当者→治験コーディネーター(CRC))

勉強会

製薬会社の担当者(主に企画・プロジェクトマネージャー・CRA(臨床開発モニター)など)が、新しく実施する治験を担当する予定の治験コーディネーター(CRC)を一同に集めて勉強会を行います。

勉強会では「治験実施のスケジュールや注意点」「獲得症例の目標数」「病院一覧」「治験薬の組成やデータ」などについて、プロトコル(治験実施計画書)や治験薬概要書などを用いて説明が行われます。

すでに国内で数多くの治験が実施されてたり、安全性が高いことが予想されたりする場合、勉強会は1~3日程度と比較的短い期間で終わります。それに対して、国内で初めて実施する治験や、最先端のテクノロジーが用いられている薬剤、安全性のデータが少ない場合などの際には、勉強会は何週間にもわたって行われます。

勉強会ではプロトコロル(治験実施計画書)や治験薬概要書の分からない点を積極的に質問し、勉強会が終わるまでには、治験に関わる人達から何を聞かれても説明ができるよう、治験の全体像から詳細までを深く理解できている状態になっていることが理想です。

また、製薬会社の担当者が治験の全てを知っているわけではありません。そのため、勉強会で理解できないと感じた部分については、他の人から教えてもらうことも大切です。その時に最も頼りになるのは、やはり経験が豊富な治験コーディネーター(CRC)のプロジェクトリーダーです。

他にもSMA(治験事務局担当者)や同僚などに聞いても良いでしょう。より専門的な理解を求める場合、疾患は治験担当医師や看護師、薬剤は薬剤師、検査は検査技師など、それぞれの分野のスペシャリスト達に聞く方法もあります。そして、一通りの準備が終わった段階で、次のスタートアップミーティングへと進みます。

《 プロトコル(治験実施計画書)の主な内容 》

  • 治験の概要
    1)目的
     ・対象患者、治験薬名、投与量、投与機関、目指す効果など
    2)対象
     ・選択基準(性別、年齢など最低限満たさなければならない条件)
     ・除外基準(合併症、基礎疾患、アレルギー、妊婦など治験に参加できない条件)
    3)被験者への説明と同意に関する記述
    4)目標症例数
    5)治験実施期間
    6)治験薬剤
    7)治験方法及び投与方法
  • 治験計画の背景(開発の経緯、毒性作用、薬理作用、先行試験の結果など)
  • 治験の方法
    1)治験の種類
    2)治験のスケジュール(投与期間など)
    3)被験者の募集・登録方法
    4)投与方法 など
  • 治験の中止、脱落基準
  • 被験者の機密保持(被験者は識別コードを使用、実名は症例報告書には記録しない)
  • データの解析方法

臨床開発モニター(CRA)の仕事内容はこちら
CRAの仕事内容
みんなの回答はこちら
CRCになってからの勉強で大変な部分を教えて下さい

スタートアップミーティング(医療機関内で治験に関わる人が一同に集まる)

スタートアップミーティング

治験を始める前に製薬会社の担当者(主にCRA(臨床開発モニター))が治験を行う医療機関内で、治験責任医師・分担医師・治験コーディネーター(CRC)・SMA(事務局担当者)・看護師・臨床検査技師・薬剤師・放射線技師・事務員など、病院で治験に関わる人達を一同に集めて、これから始める治験の内容を説明するためのミーティングを開催します。これを治験用語で「スタートアップミーティング」と言います。

スタートアップミーティングではCRA(臨床開発モニター)が治験の内容を一通り説明した後、それぞれに担当してもらう業務を決めていきます。治験コーディネーター(CRC)はスタートアップミーティングがスムーズに進むようにミーティング場所の確保や、参加者のスケジュールの調整・配布する資料の準備などを行います。また、スタートアップミーティング中には、SMA(治験事務局担当者)と協力して、CRA(臨床開発モニター)が説明をしやすいようにフォローをしたり、進行役を務めたりします。

《 スタートアップミーティングの内容 》

  • プロトコル(治験実施計画書)の説明
  • 治験薬概要書の説明
  • 被験者の基準の説明
  • 過去の治験実績の紹介
  • 各人の業務分担の取り決め

事務局担当者(SMA)の仕事内容はこちら
SMAの仕事内容

各部署への説明

部署への説明

スタートアップミーティングだけでは、治験をどのように進めれば良いかを正確に理解できない担当者のために、治験コーディネーター(CRC)は治験が行われる部署を個別に訪問し、スタートアップミーティングでは説明できなかった具体的な業務の内容を説明したり、分からない点などがないかを確認したりします。

治験をスムーズに進めるためには各部署の協力が欠かせないため、治験の説明と平行して、各担当者と良好な信頼関係が築けるように務め、治験をスムーズに進めるために必要な協力しあえる人間関係を構築しておきます。

その他にもスタートアップミーティングには不参加だが、少しだけ治験に関わる可能性がある医療従事者のために、ひと目で治験の内容を分かってもらえる資料を作成して、各部署に配布して周ります。治験に関わる全員が治験に協力してもらえるよう、治験コーディネーター(CRC)は様々な手段を使って治験の理解促進に務めます。

《 配布する資料の項目 》

  • 治験の概要
  • 検査項目
  • 治験のスケジュール
  • 禁止事項など

現役CRCのコメント1
あまり詳しくない領域の治験を担当する場合は、自宅に帰った後も勉強をするときがあります。エクセルとパワーポイントをバリバリと使ってミーティングの資料を作成しますので、パソコンの達人になれちゃいます。

治験薬・検査キットの管理

検査キット

製薬会社から治験薬と検査キットが搬入されます。治験コーディネータ(CRC)は搬入された治験薬と検査キットの受け取りをはじめ、在庫管理や返品といった管理を行います。被験者が来院した際にすぐ検査ができるよう、オーダリングシステムを使用してセットアップを行っておきます。

現役CRCのコメント15
治験薬と検査キットは一度にたくさん送られてきます。治験コーディネーター(CRC)はテキパキと検品をして、分かりやすいように収納していきます。厳しく温度管理されている治験薬のために、専用の冷蔵庫の手配をすることもあります。のんびりとやっている時間はありませんよ。

02いよいよ治験がスタートします

目標症例数を達成するためには多くの被験者が必要です。

治験に参加していただける候補者を、あらゆる手段を使って探します。(被験者スクリーニング)

被験者のスクリーニング

被験者のスクリーニング

被験者のスクリーニング

「被験者スクリーニング」とは治験に参加していただける被験者を探す作業のことを言います。治験コーディネーター(CRC)はスタートアップミーティングで設定された目標の症例数を達成するため、様々な手段を用いて被験者集めに奔走することになります。

大きな病院ではは第一相と第二相を兼ねたり、稀少・難病疾患を対象としたりする治験が増加しており、目標症例数を達成する難易度が上がっています。また、治験のグローバル化が進んだことにより、治験のスピードがますます要求されるようになっています。その結果、治験コーディネーター(CRC)には多様な手段を用いてスピーディに被験者の可能性がある患者様を集める能力がますます求められるようになってきています。

被験者スクリーニングは主に一次スクリーニングと二次スクリーニングに分けられます。一次スクリーニングとは被験者となる可能性がある患者様を探し、その患者様がプロトコル(治験実施計画書)で定められた選択・除外基準の適格性があるかどうかを判断し、併用禁止薬を服用していないかなどの調査を行うことを言います。二次スクリーニングはインフォームドコンセントや治験説明会を経て、さらに細かいチェックや健康診断を行うことを言います。

CHECK「選択基準」と「除外基準」

治験の参加条件には「選択基準」と「除外基準」があります。選択基準はその基準に該当すること、除外基準はその基準に該当しないことを言います。

  • 選択基準の一例
    年齢が20歳以上60歳以下、 総ビリルビンが2.3mg/dl未満、血小板数が60,000/mm3以上
  • 除外基準の一例
    過去に治験と同じ薬の投与を受けたことがある、4ヶ月以内に他の治験に参加したことがある、妊娠・授乳中である

CHECK被験者の可能性がある患者様の探し方

  • 医師から被験者の可能性がある患者様を紹介してもらう
    治験責任医師や治験分担医師から被験者の可能性がある患者様を紹介してもらう方法です。ただし、医師が常に積極的に患者様を紹介してくれるとは限りません。なぜなら、医師は非常に忙しいため、被験者を探すことを忘れてしまったり、後回しにしたりすることがあるからです。

    そのため、治験コーディネーター(CRC)は医師がモチベーションを高くして被験者スクリーニングに取り組めるよう、定期的にコミュニケーションをとって情報提供を行ったり、被験者スクリーニングが上手くいかない原因を一緒に探るなどのサポートを行います。

    医師とはいえ、治験の全てを頭に入れておくことは難しいため、治験コーディネーター(CRC)は多忙な医師の状況を理解し、被験者スクリーニングに協力しやすい環境を作るための手助けをする必要があります。

  • 病院の電子カルテや病院医療情報システムを使って被験者の可能性がある患者様を探す
    治験コーディネーター(CRC)が病院の電子カルテや、登録者データなどのシステムを使って被験者の可能性がある患者様を探す方法です。最近は閲覧用の電子カルテ端末も増えており、効率的に被験者の可能性がある患者様を探すことが可能になっています。しかし、効率的に被験者スクリーニングを行えるようになったにもかかわらず、被験者の登録数は思うようには増えていません。

    なぜなら、病院ごとに使用しているシステムが異なっているため、治験コーディネーター(CRC)が検索の仕方に慣れていないと、被験者の可能性がある患者様を見逃してしまう場合があるからです。そのようなことを避けるためには、治験コーディネーター(CRC)が病院ごとのシステムの違いを理解したうえで、担当する治験にあった病名や使用薬剤で上手に検索を行えるよう、高度な検索スキルを身につける必要があります。

  • 病院の設備を利用して被験者の可能性がある患者様を集める
    ポスター・ホームページ・情報案内電子掲示板・インターネット掲示板などの病院の設備を活用して、被験者の可能性がある患者様を探す方法です。病院・クリニックによって利用できる設備が異なります。

    ある病院では効果が小さくても、別の病院では効果が大きいこともあるため、治験コーディネーター(CRC)は試行錯誤を繰り返しながら、治験を行っている病院で最も効果が大きい方法を見つけ出す必要があります。

    特に被験者の集まりが悪く目標症例数に達しない可能性がある治験については、治験コーディネーター(CRC)は考えうる限りの色々な方法を積極的に担当者へ提案して、様々な方法で被験者の募集を行ってもらうよう病院へ働きかける必要があります。
  •   被験者募集ポスターの例

    被験者募集ポスター

  • 外部の広告を利用して被験者の可能性がある患者様を集める
    インターネットや新聞などの外部の広告を利用して、一般の人の中から治験に参加しても良いと思うボランティアを募集します。その応募者の中から被験者の可能性がある患者様を探す方法です。治験に参加しても良いと思っている人を治験ボランティアと言い、治験ボランティアが登録されているリストのことをボランティアパネルと言います。

    最近は病院以外にも、治験ボランティア募集を専業として行っている会社も増えています。病院内だけで被験者を集めることが難しかったり、多数の被験者を確保する必要があったりする場合は治験ボランティアを利用することにより、迅速に多数の被験者を集めることが可能となります。

    外部の広告を利用する場合、まず治験コーディネーター(CRC)は製薬会社のCRA(臨床開発モニター)や治験担当医などと原稿内容やスケジュールなどの打ち合わせをしたうえで、治験ボランティア募集会社などに申し込んで広告の出稿手続きをします。

    広告を出稿した後は治験ボランティアに協力してもよいという方から問い合わせがありますので、治験コーディネーター(CRC)は治験ボランティアを希望する人の問い合わせの対応を行い、被験者の可能性がある患者様を見つけ出します。

  代表的な治験ボランティア募集サイト

被験者の可能性がある患者様が見つかると治験コーディネーター(CRC)はすぐに該当者に会いに行き、プロトコル(治験実施計画書)の選択・除外基準の適格性があるかどうか、合わせて併用禁止薬を服用していないかなどの調査を行います。被験者に基準の適格性が備わっている場合は次のインフォームド・コンセントへと進みます。

現役CRCのコメント2
被験者スクリーニングでは治験コーディネーター(CRC)がカルテを正確に素早く読み取る能力があるかどうかを問われます。治験への参加希望者が多すぎると、対応に追われてドタバタします。逆に少なすぎるとやることがなくて、ぼんやりと一日が過ぎてしまうこともあります。何事もほどほどが一番ですね。
現役CRCのコメント3
インフルエンザの治験では38度以上の発熱といった症状がでてから36時間以内に薬を飲む必要があるため、症状が悪化してから医療機関を受診したのでは間に合わない可能性があります。そこで、実際にインフルエンザにかかる前に、治験の被験者を集めることがあります。インフルエンザや泌尿器系の治験は冬に行うことが多いです。
現役CRCのコメント4
専門性の高い治験ではプロトコル(治験実施計画書)の基準に適しているかを見極めるために深い知識が求められます。ベテランの治験コーディネーター(CRC)は日ごろから勉強をしており、既往歴や合併症の有無の判断に慣れており、被験者スクリーニングを正確かつスピーディに行えます。
現役CRCのコメント13
がんなどの治験は対象とする被験者の数が少ないため、必要な症例の数も少なくなります。それに対して、生活習慣病などの治験は、多くの症例を集める必要があるため、治験ボランティアパネルを利用することが多いです。

03被験者との面談・フォロー

今までの知識と経験を生かして被験者から同意をもらいます。

候補者が「治験へ参加できる条件」に当てはまるかを確認します。被験者がきちんと治験を受けられるようにサポートします。

被験者との面談・フォロー

インフォームド・コンセント(IC)のサポート

インフォームド・コンセント(IC)のサポート

「インフォームド・コンセント」とは治験へ参加したいと思っている方が、治験の説明を受けた後に、治験へ参加することに同意し、書面によって意思を表示することを言います。

具体的には、医師が治験へ参加したいと思っている方に対して、治験の目的や方法・スケジュール・薬の候補の特徴などが書かれた「説明文書」を渡したうえで、その内容を詳しく説明します。所要時間はおよそ30分~1時間前後であることが多く、治験へ参加したいと思っている方が、治験の内容を理解したうえで参加の意思を表示し、「同意文書」に署名してインフォームド・コンセントは完了します。

治験コーディネーター(CRC)はインフォームド・コンセントで使用する説明文書や同意文書の作成を手伝ったり、治験の内容をより分かりやすく説明した参考資料を作成したりします。また、治験責任医師や治験分担医師が行うインフォームド・コンセントへ一緒に参加し、医師が行う説明の補助をしたり、医師が分からない治験の専門的な質問に対して回答したりします。

このインフォームド・コンセントは治験コーディネーター(CRC)にとって、被験者スクリーニングと並ぶメイン業務の一つで、治験コーディネーター(CRC)と言えばこのインフォームド・コンセントを真っ先に思い浮かべる方も多いようです。

インフォームド・コンセントは主に治験の仕組みや疾患の知識が求められる被験者スクリーニングと異なり、治験へ参加したいと思っている方の気持ちを理解するカウンセリングスキルや、理解度に応じて分かりやすく説明するコンサルテーションスキルが求められます。

このインフォームド・コンセントの説明内容によって治験へ参加する・しないを決める方も多いため、目標数の被験者を集め、新薬開発に貢献することが求められる治験コーディネーター(CRC)にとって、最も知識や能力が問われる場面であると言えます。

インフォームド・コンセントで医師や治験コーディネーター(CRC)は治験薬に期待できる効果などのメリットだけでなく、副作用などのデメリットも合わせて説明する必要があります。治験に興味を抱いている方は治験薬の効果に期待を寄せている反面、副作用に対して不安や恐怖心を抱いていることが多いです。

また、インフォームド・コンセントを受ける方の中には、治験薬のなかに偽薬であるプラセボが混じることや、それまで投与していた薬の投与を中止する期間が必要であることを知ってショックを受けて参加をためらう方もいらっしゃいます。

治験コーディネーター(CRC)はそのような治験に対する不安や怖れなどの気持ちを、インフォームド・コンセントへ参加した方々と共有し、一緒になって治験へ参加する意義を考えていくことで、治験へ参加を希望している方々が自らの意思で治験への参加・不参加を決断するための助けとなる存在であることが求められます。

治験へ参加したいと思っている方は様々なタイプがいらっしゃいます。例えば医師に全幅の信頼を置いており、医師から説明を受けた段階で迷わずに参加を決める方から、治験について何も知らずに長時間にわたり説明を求める方、事前にご自身で色々と調べており分からないことだけ手短に説明を求める方、治験の副作用などを心配して何日も迷われる方など様々です。

治験コーディネーター(CRC)はどのような方が参加を希望されても、常に良き相談相手となれるように努めることが求められます。

治験へ参加したいと思っている方が、治験に参加することに同意し、書面へ署名をするとインフォームド・コンセントは完了となります。

CHECKGCP(治験を実施する際に遵守すべき基準)で定められているインフォームド・コンセントの主な項目

  • インフォームド・コンセントは被験者が署名した書面によって証明される
  • 治験を行うものは、事前に治験の目的や内容について説明を行う必要がある
  • 治験のメリットだけでなく、予想しうる最悪の事体についても説明を行う必要がある
  • 治験への参加は参加者の自由意思によって決められる必要がある
  • 治験の参加者は治験をいつでも自由に辞めることができるなど

《 インフォームド・コンセントで被験者に説明する必要がある主な項目 》

  • 治験の目的
  • 治験責任医師の氏名や連絡先
  • 治験の方法
  • 予測される治験薬の効果および不利益
  • 秘密保全
  • 補償に関することなど

《 インフォームド・コンセントで守るべき事項 》

  • 分かりやすい言葉での説明
  • 被験者の自由な意思
  • 書面での同意と文書の保管

現役CRCのコメント5
インフォームド・コンセント(IC)では、治験コーディネーター(CRC)の力が試されます。患者さんの治療を優先させるか、治験を優先させるか・・・。治験コーディネーター(CRC)は良心の呵責に悩まされる時もありますが、新薬の発展のために使命感を持って業務に取り組みます。
現役CRCのコメント6
最近はインターネットで誰もが治験について調べることができるようになりました。そのため、以前よりも治験の参加を希望する方々から専門的な質問を受けることが増えています。そのため、治験コーディネーター(CRC)は何を聞かれても、すぐに返答できるような準備をしておくことが求められています。
現役CRCのコメント13
日本ではインフォームド・コンセント(IC)に対して根強い偏見が残っていると言われています。例えば、治療上の危険を知りたくない患者様は多く、情報の内容によっては患者様が強いショックを受けてしまうことがあります。

また、説明しても情報を理解できなかったり、忙しくて説明を受ける時間がとれない患者様もいらっしゃいます。他にも結局、医師の言うとおりに治療を受けるため、説明を受けても意味がないと考える患者様もいらっしゃいます。
現役CRCのコメント14
同意説明文書の量は30ページほど。ベテランの治験コーディネーター(CRC)ほど、分かりやすく、簡潔に伝えられるようになりますよ。頑張りましょうね。

被験者のフォロー

被験者のフォロー

治験コーディネーター(CRC)は治験へ参加することに同意した方が、スムーズに治験を完了できるように様々なフォローを行っていきます。

治験コーディネーター(CRC)が被験者へ行う主なフォローは、健康診断のサポート、診察スケジュールの管理、診察・検査のサポート、治験薬の服薬管理、被験者日誌の作成、有害事象が発生していないかの確認など、多岐にわたります。

CHECK治験コーディネーター(CRC)が被験者へ行うフォローの内容

  • 健康診断のサポート
    インフォームド・コンセントを完了した方は、治験に参加できる状態であるかどうかを確認するために健康診断を受けていただくことになります。

    健康診断の内容は身長・体重・血液検査といった基本的なものと、試験や個人に合わせて必要なものがあります。治験コーディネーター(CRC)は健康診断の内容や費用の負担についての説明を行い、被験者が健康診断をスムーズに終えられるようサポートします。

    また、ウォッシュアウト期間(薬の影響を排除するために、何も投与しない期間)を設ける場合は、治験コーディネーター(CRC)がスケジュールを管理します。

  • 本登録(組み入れ)
    治験コーディネーター(CRC)は被験者のデータを専用のデータベースに登録します。登録が完了すると被験者に割り当てられる薬がランダムに決まります。治験コーディネーター(CRC)は番号や数を確認したうえで、治験薬を医師や薬剤師に渡します。

  • 診察スケジュールの管理
    治験が始まると被験者は定期的に病院で診察を受ける必要があります。診察の頻度は治験の進み具合によって大きく異なり、治験がスタートして間もない時は毎日〜週に2回などと多かったり、治験が終わりに近づくと1ヶ月に1回など少なかったりします。

    治験コーディネーター(CRC)は被験者が治験実施計画書(プロトコール)によって定められたスケジュールをきちんと順守して診察を受けていただけるように、被験者の診察スケジュールをきちんと管理します。

    具体的には被験者に来院日や診察日が記入されたスケジュール表を渡したうえで、来院が必要な場合は、診察の前日に被験者へ電話を入れたり、メールをするなどして、被験者が診察をうっかり忘れてしまうことを防止します。

    治験コーディネーター(CRC)は複数の被験者を担当するため、カレンダー管理ソフトやスケジュール管理システムを利用して、正確かつ効率的に複数の被験者の診察スケジュールを管理します。

  • 診察・検査のサポート
    治験コーディネーター(CRC)は被験者の診察に同席し、診察がプロトコル(治験実施計画書)を順守して行われるよう医師をサポートします。医師や被験者から質問があった際は返答します。被験者は診察と合わせて様々な検査を受けます。

    検査の内容は治験の種類やスケジュールによって異なるため、治験コーディネーター(CRC)は被験者が受ける検査を間違わないように、検査項目を確認したり、検査場所を案内したりします。

  • 治験薬の服薬管理
    治験コーディネーター(CRC)は薬剤師と協力して、被験者が治験薬を正確に服薬できるようサポートします。また、被験者が併用を禁止されている薬を間違って飲んでしまわないよう、治験薬以外の併用薬の使用状況を正確に把握するよう努めます。

    具体的には被験者に服薬日誌を配布し、服薬の状況を細かく記入してもらうことによって、正確な服薬管理を行います。服薬日誌の記入状況は治験コーディネーター(CRC)がチェックを行い、記入漏れが見つかった場合は正確に記入してもらうように被験者を指導します。

    服薬方法が複雑で、服薬日誌だけでは正確に服薬を管理できない場合は、分かりやすい資料を別に作成したり、服薬ボックスやお薬カレンダーを使用したりして、被験者が服薬の方法や期間・回数を守りやすくなるようサポートをします。

    また、治験コーディネーター(CRC)は併用禁止薬・注意薬を服薬日誌の目立つページに記載したり、治験以外の服薬状況を細かくヒアリングしたりすることによって、被験者の併用薬の管理を行います。使わなかった治験薬や使用済みの容器は必要に応じて回収し、被験者が計画を守って服薬している証拠として残しておきます。

  • 被験者日誌の作成
    治験コーディネーター(CRC)は被験者の状態をより細かく知るために、被験者に服薬日誌と合わせて被験者日誌を配布して、日常の生活状況や気になったことなどを記入してもらいます。

    治験コーディネーター(CRC)は服薬日誌と被験者日誌を合わせてチェックすることで、より細かく被験者の状態を把握するように努め、治験がプロトコル(治験実施計画書)を順守して進んでいるかを確認します。

    また、被験者日誌の内容は被験者に発生する可能性がある有害事象を、早期に発見するための資料としても活用します。服薬日誌と被験者日誌の作成はGCP(治験を実施する際に遵守すべき基準)により規定されており、後述するCRF(症例報告書)作成の際の資料として使用します。最近はスマートフォンなどからも被験者日誌を作成できるようになってきています。

  • 有害事象が発生していないかの確認
    治験コーディネーター(CRC)は被験者の診察結果・検査値の変動・被験者日誌に書かれている内容・被験者との会話の中身などから、被験者に有害事象が発生していないかを確認します。もし、有害事象の発生が認められた場合は、迅速に医師や製薬会社へ報告したうえで、報告書を作成したり、被験者へ有害事象の内容を説明したりします。

    被験者を保護する観点から有害事象の発生を見落とすことは許されないため、治験コーディネーター(CRC)は被験者の状況を詳しく観察したり、治験薬の安全性情報を正確に理解することによって、重篤な有害事象だけでなく、その他の有害事象の発見のサポートを行うことが求められています。

治験コーディネーター(CRC)が被験者をフォローする期間は長い時で半年以上におよびます。そのため、治験コーディネーター(CRC)には治験を長期にわたってスケジュール通りに進められるよう、被験者のスケジュールをミスなく管理できる能力が求められます。

また、原則、被験者一人に対して、一人の治験コーディネーター(CRC)が専任でフォローを行うため、治験コーディネーター(CRC)には、被験者と長期的な信頼関係を構築するための誠実な人間力が求められます。

現役CRCのコメント7
治験コーディネーター(CRC)は病院で治験を受ける被験者にずっと付き添います。被験者からは病気のことだけでなく、趣味や家族の今後など、プライベートな悩みの相談を受けることも多いようです。

病院の先生の悪口や評判なども聞けちゃうかもしれません。思わずうなずいちゃうかも。
現役CRCのコメント18
治験コーディネーター(CRC)は被験者さんの診察に同席します。場合によっては1ヶ月で30回以上も同席することもあるようです。医師の診察の内容を聞き続けているうちに、担当する疾患について詳しくなっていくようです。
現役CRCのコメント19
「試験Aは降圧剤の併用が可、試験Bは併用不可」「試験Cは投薬後に30分以内に最初の採血、試験Dは1時間以内の採血」など、治験コーディネーター(CRC)は複数の試験を混乱せずに進める必要があります。間違えてしまうと、被験者の治験が中止になる(逸脱)こともあるため、常に「ダブルチェック」が欠かせません。

被験者とのお別れ

被験者とのお別れ

治験が終わると被験者とも別れることになります。さみしい瞬間です。

現役CRCのコメント8
以前は治験が終了したら、その治験薬は実際の治験が終了して厚生労働省の承認を得るまでは、手に入れることができませんでした。しかし、現在は治験終了後も、その治験薬を飲み続けることができるようになっています。

CHECK新たな治験のやり方であるDCT(分散型臨床試験)の実用化に向けた取り組みが進んでいます。

DCT(分散型臨床試験)の仕組み

医療機関で行われていた臨床試験を自宅などに分散化させることで、患者様が定期的に来院しなくても臨床試験に参加できる仕組みをDCT(Decentralized Clinical Trial/分散型臨床試験)もしくはバーチャル臨床試験(VCT、Virtual Clinical Trial)と言います。DCT(分散型臨床試験)は以下のような新たなデジタル技術の活用によって実用化に向けた取り組みが進んでいます。

  • eConsent(電子的同意取得)
    デジタルデバイスやネットワークを介して治験の説明や同意の取得を行います。例えば、事前に用意した動画を使用して治験の説明を行ったり、タブレットへの電子サインにより同意取得を行います。患者様は必ずしも病院に出向く必要はなく、自宅にいながら治験に参加する意思表示ができます。
  • eCOA(ePROや電子患者日記などを含む)
    タブレットやスマートフォンなどを通じて、患者様の状態や状況などの臨床試験情報をリアルタイムで入手し評価や管理を行います。
  • eリクルート
    施設単位ではなく全国の患者様を対象として被験者候補の抽出を行います。
  • オンライン診療/訪問診療/訪問看護/訪問治験
    被験者が来院されなくても治験を行えるようになります。
  • ウェアラブルデバイス
    例えば、歩数などの活動記録や手足の震えや足取りなどをウェアラブルデバイスによって測定します。
  • 治験薬/試験資材の被験者宛配送
    治験薬をメーカーから直接配送できる仕組み作りが検討されています。

04報告書の作成から治験の終了まで

治験のデータを全てまとめてプロジェクトは終わります。

「症例報告書」を作成し、「モニタリング」と「有害事象」の対応をします。予定数に達すると治験は終わりです。

報告書の作成から治験の終了まで

症例報告書(CRF)の作成

症例報告書(CRF)の作成

症例報告書とは治験を行った際の被験者の検査データや副作用などの情報を取りまとめた報告書のことを言います。

CRF(Case Report Formの略)と呼ばれることもあります。プロトコル(治験実施計画書)によって治験依頼者である製薬会社への報告が義務付けられており、治験コーディネーター(CRC)の業務はスタートアップミーティングで割り当てられた数の症例報告書(CRF)を集めることであると言えます。

具体的には、治験コーディネーター(CRC)は治験責任医師の指示のもと、被験者のカルテや投薬記録・検査結果・所見などから必要な部分を転記して症例報告書(CRF)としてまとめます。

症例報告書(CRF)は昔は手書きで作成されていましたが、現在はオンライン化が進み、EDC(Electronic Data Caputure Systemの略)やCTMS(治験管理システム、Clinical Trial Management Solutionの略)を利用してパソコンで作成されるようになっています。オンラインで利用される、電子化された症例報告書は「eCRF」と呼ばれます。また、国際共同治験の場合は英語で症例報告書(CRF)を作成する必要があります。

主要なEDC、CTMSの一覧
会社名 製品名
オラクル Oracle Health Sciences InForm GTM
Medidata Solutions Medidata Rave
EPデジタルシェア(EPSグループ) E-DMS Online、TOMA-s(EP綜合)
NTTデータ DATATRAK ONE

《 症例報告書(CRF)に記載される主な内容 》

  • 患者の基本属性
  • 病歴
  • 家族の病歴
  • 薬物治療歴
  • 治験全過程における各種検査データ
  • 副作用
  • 担当医師の所見
  • 中止・脱落
  • 総合評価など

《 症例報告書(CRF)の書き方のポイント 》

  • 治験依頼者や治験実施責任者が作成した「症例報告書の手引き」や「症例報告書の修正・変更に関する手引き」を順守する
  • 専用コードを利用して被験者の個人情報を守る
  • カルテや投薬記録・検査結果・所見など(原資料)を正確に転記する
  • 原資料と症例報告書(CRF)が一致しない場合は、理由を説明する文書を添付する

現役CRCのコメント9
あいまいな報告書はダメですよ。きっちり正確に作成してください。臨床検査技師や薬剤師・管理栄養士より、看護師出身の治験コーディネーター(CRC)のほうが転記ミスが多いようです。だらしない人は治験コーディネーター(CRC)に向いていません。
現役CRCのコメント10
国際共同治験では英語で症例報告書(CRF)を作成します。英語が苦手の人でも作成できるように、翻訳ソフトがシステムに組み込まれています。治験の業界でもIT化が進んでいるようです。

各関係者との調整

関係者との調整

治験コーディネーター(CRC)は必要に応じて各担当者と打ち合わせを行い、治験がスムーズに進むように各担当者間の業務の調整をします。

治験コーディネーター(CRC)が関わる方は主に治験責任医師や治験分担医師などの病院の治験担当者、薬剤師や看護師などの病院の医療従事者、SMA(治験事務局担当者)やCRA(臨床開発モニター)などの病院以外の治験関係者の3つに分けられます。

病院の治験担当者と医療従事者に対しては、治験の専門家としての立場から、治験の専門的な質問に返答したり、見落としがちな細かい部分を指摘したり、業務の遂行を手伝ったりします。また、病院以外の治験関係者に対しては、治験コーディネーター(CRC)自身が分からないことを質問したり、困っていることを相談したり、治験の進め方の指示を受けたりします。

治験コーディネーター(CRC)は名前にも含まれているように、各関係者とのコーディネートをする専門家です。様々な関係者の情報の橋渡しとして、治験がスムーズに進むための潤滑油としての働きが求められます。

そのため、治験コーディネーター(CRC)には情報を的確に伝達するコミュニケーション力、相手の状況や気持ちを理解したうえで業務をスムーズに進められる調整力、各担当者から不平や文句を言われても挫けないストレス耐性力が求めらます。

CHECK各関係者と打ち合わせが必要な内容

  • 病院の長・・・・・・治験を始めるときや、重要な情報を報告
  • 治験責任医師/PI・・・治験の全体像
  • 治験分担医師/SI・・・治験の詳細(カルテ作成/治験薬の投与/有害事象の対応など)
  • 薬剤師/治験薬管理者・服薬のスケジュールや方法
  • 臨床検査技師・・・・検査項目や検査スケジュール
  • 放射線技師・・・・・検査項目やフィルムの扱い
  • 看護師・・・・・・・被験者の対応方法やワークシートの書き方
  • 受付・・・・・・・・来院時の段取り
  • 医事課・・・・・・・費用
  • CRCリーダー・・・・治験の詳細な内容
  • CRA・・・・・・・・プロトコルの詳細やモニタリング
  • SMA・・・・・・・・書類の管理方法
  • 品質管理・・・・・・症例報告書への記載方法

CRCが関わる人達

現役CRCのコメント20
病院長は忙しい方が多いですから、お願いを一つするのも大変です。打ち合わせの約束を取り付けるのに1日以上かかることも珍しくありません。

治験責任医師は治験に前向きな方が多いので、一緒に仕事がやりやすいと感じます。しかし、治験分担医師には「上から言われたからとりあえず治験を手伝っているだけ」という方もいらっしゃいます。

全ての医師が治験に前向きな気持ちを持つよう、CRCは治験の規則を丁寧に教え、親身にサポートする必要があります。
現役CRCのコメント21
看護師は日常の業務で忙しい方が多いこともあり、治験に関心を持つ人が少ない印象です。「CRCは余計な仕事を持ってくる、できれば関わりたくない人」とやっかいもの扱いする看護師もいらっしゃいます。

看護師に邪魔な存在と思われても、決してへこたれずに治験を進めねばなりません。CRCの腕の見せどころです。

臨床検査技師や薬剤師は学生時代に治験を学んでいるため、治験に協力的な方が多い印象です。

ただし、検査部や薬剤部ごとに作業の手順が細かく決まっているため、CRCはその手順を理解したうえで、治験への協力をお願いする必要があります。

モニタリング・GCP実地調査への対応

モニタリング・監査への対応

モニタリングとは治験が適正に行われることを確保するために、治験の依頼者が治験の進行状況を調査し、治験がGCP(治験を実施する際に遵守すべき基準)やプロトコル(治験実施計画書)などを順守して実施されていることを保証する活動のことを言います。

治験コーディネーター(CRC)はモニタリングを行うために来院した治験依頼者から指名されたCRA(臨床開発モニター)の活動に立ち会い、様々なサポートを行います。

治験コーディネーター(CRC)はモニタリングが行われる前までに、同意・説明文書などの治験を行うために必要とされている様々な書類と、カルテや投薬記録・検査結果などの治験を行う際に発生した原資料をCRA(臨床開発モニター)が一覧しやすいように整理してまとめておきます。また、症例報告書(CRF)が原資料から正確に転記されているか、転記漏れが発生していないか、などを繰り返し確認しておきます。

モニタリング中は、最初に現在の治験の進捗状況を治験コーディネーター(CRC)からCRA(臨床開発モニター)へ細かく伝えます。その後、CRA(臨床開発モニター)は半日ほどかけて、原資料が正確に症例報告書(CRF)へ転記されているかを確認(SDVと言う)したり、有害事象の有無を見極めたり、関係者からヒアリングをしたりするなどのモニタリングを行います。

治験コーディネーター(CRC)はCRA(臨床開発モニター)からの質疑応答へ対応したり、関係者への案内や連絡を行ったり、入力内容の修正を行ったりするなど、モニタリングが正確かつ迅速に進むよう様々なサポートを行います。

《 モニタリングの主な項目 》

  • 被験者ごとに原資料、同意文書、説明文書があること
  • 被験者が選択基準に該当し、かつ除外基準に該当しないこと
  • 併用禁止薬が使用されていないこと
  • 検査データが基準を満たしていること
  • 有害事象や逸脱理由が書かれていること

現役CRCのコメント11
CRA(臨床開発モニター)が清潔でイケメンだと思わず仕事をがんばっちゃいます。治験コーディネーター(CRC)のことを優しく扱ってくれるモニターさんが最高です。逆に不潔で、上から目線のモニターは嫌いです。

治験が終了した一部の医療機関では、厚生労働省から委託を受けた医薬品医療機器総合機構(PMDA:Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)から調査官が来院し、治験がGCP(治験を実施する際に遵守すべき基準)に準じて正確に行われているかどうかの調査が行われます。これをGCP実地調査と言います。

GCP実地調査では1日にわたり、2~3名の調査官がカルテ・検査結果などの原資料と症例報告書(CRF)の詳細な照合を行ったり、治験薬管理場所・治験事務局などの視察をしたりします。治験コーディネーター(CRC)はSMA(治験事務局担当者)と一緒にGCP実地調査に同席し、書類の準備や閲覧のサポート・医師の回答の補助などを行います。

有害事象の対応

有害事象対応

有害事象とは治験中に発生した「薬との因果関係を問わない好ましくない作用」のことを言い、程度の軽いものから、生命を脅かしたり死亡に至る重いもの(serious adverse eventを略してSAEと言います)までいくつかのグレードがあります。治験コーディネーター(CRC)は有害事象の発見をサポートし、有害事象報告書や症例報告書(CRF)の作成を手伝います。

有害事象をスムーズに処理するためには、治験コーディネーター(CRC)に強い使命感と、深い疾患の知識の両方が備わっていることが必要です。有害事象の発見が遅れると、被験者の生命を脅かしたり、最悪の場合は死亡に至る可能性があるため、治験コーディネーター(CRC)には、重い責任に耐えられるだけの治験への強い使命感を有していることが求められます。

また、治験の種類によっては、有害事象の原因が治験薬と疾患のどちらであるかの見極めが難しかったり、発生が予想される有害事象の種類を予測することが難しかったりするため、治験コーディネーター(CRC)には発生が予測される有害事象を理解し覚えておくだけでなく、疾患が引き起こす症状の詳細や、発生のメカニズムまでの深い知識が求められることになります。

予期せぬ有害事象の発生が予想されたり、有害事象を見極めるために疾患の深い知識が求められる可能性が高い治験については、看護師や薬剤師出身で豊富な疾患の知識があったり、経験が豊富でベテランであったりする治験コーディネーター(CRC)が担当することが多くなります。

治験コーディネーター(CRC)は医師と協力して、診察内容や検査結果から被験者に有害事象が発生していないかを常に確認します。有害事象の発生が確認できた場合には、有害事象の種類を見極め、必要な処置を行います。その後、治験コーディネーター(CRC)は有害事象名・重症度・治療内容・治験薬との因果関係など、有害事象の内容の全てを症例報告書(CRF)に記載します。

もし、程度が重い重篤な有害事象(SAE)の発生が確認できた場合には、治験コーディネーター(CRC)はすぐに製薬会社と病院長へ緊急報告を行い、速やかに緊急報告書を作成して提出します。治験が継続されるかどうかはIRBでの審査などを経て判断されることになります。

CHECK重篤な有害事象

  • 死亡に至るもの
  • 生命を脅かすもの
  • 治療のため入院若しくは入院・加療期間の延長が必要なもの
  • 永続的若しくは重大な障害・機能不全に陥るもの
  • 先天異常を来すもの

有害事象の対応

治験終了報告書の作成

GCP(治験を実施する際に遵守すべき基準)では、治験が終了(中止や中断を含む)した場合、治験責任医師はその結果を速やかに実施医療機関の長に報告をしなければならないと規定されています。

治験コーディネーター(CRC)は症例報告書(CRF)が予定した契約数に達し、治験に参加している被験者の最終観察、または追跡調査等の全て終了した時点で、治験終了報告書の作成に取りかかります。治験コーディネーター(CRC)は治験の実施状況や書類提出の締切日を把握しているため、正確な治験終了報告書を作成することができます。

その後、製薬会社などの治験依頼者と治験責任医師が治験終了報告書の内容を確認し、実施医療機関の長に提出されることになります。

治験の終了

治験の終了

以上で治験コーディネータ(CRC)の仕事も一区切りです。お疲れ様でした。

現役CRCのコメント12
当初の予定より早く契約症例数に達した施設では、製薬会社から追加の治験(追加症例と言います)を頼まれることがあります。この追加症例を獲得できると、製薬会社からの評価が上がるため、治験コーディネーター(CRC)の評価・査定のアップにつながります。

追加症例をたくさん獲得できるかどうかが、治験コーディネーター(CRC)の優秀さの一つの目安となります。
現役CRCのコメント17
厚生労働省の審査を通過して販売にたどり着く薬の比率は治験薬の10%にも満たないと言われていますが、ここまでたどり着けば一安心しても良さそうです。
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