治験コーディネーター(CRC)が所持する医療資格や、治験コーディネーター(CRC)の認定資格の種類やメリットについて解説します。治験コーディネーター(CRC)の資格に興味がある方はぜひ参考にしてください。
まず、治験コーディネーター(CRC)が所持する医療資格についてです。治験コーディネーター(CRC)の約4人に1人は看護師(保健師や准看護師を含む)または臨床検査技師の資格を所持しています。そして、約10人に1人は薬剤師または管理栄養士(栄養士を含む)の資格を所持しています。
次に、治験コーディネーター(CRC)の認定資格です。治験コーディネーター(CRC)の認定資格は複数の団体が提供しており、それぞれに特徴があります。
CRCが所持する医療資格とCRC認定資格
CRC認定資格とは?
治験コーディネーター(CRC)になるための国家試験は存在しませんが、学会や業界団体がCRC認定試験を実施しています。この試験に合格すると、CRC認定資格を取得できます。CRC認定資格は、治験コーディネーター(CRC)の資質を保証するものです。
CRC認定資格がなくても、治験コーディネーター(CRC)になることは可能です。実際に就職や転職の場面では、実務経験が資格よりも重要視されます。
一方で、製薬メーカーは、CRC認定資格の保有者の比率が高いSMOに治験を依頼する傾向が強まっています。そのため、SMOや病院では、CRC認定資格の取得を昇進の条件にしたり、資格手当を支給してCRC認定資格の取得を奨励したりする場合も多いです。治験コーディネーター(CRC)として就職した場合には、できるだけ早くCRC認定資格を取得することが望ましいです。
CRC認定資格の一覧
- 日本SMO協会 公認CRC
- 主催団体
- 日本SMO協会
- 資格認定試験名
- 日本SMO協会 CRC公認試験
- 受験資格
- 協会が定めるCRC導入教育研修を修了し、修了証を取得している
- 導入教育研修修了日より、2年以上のCRC実務経験を有する
- 試験内容
- 筆記試験
- 受験日
- 年1回
- 受験料
- 12,000円
- データ
- 累計合格者4500人
- 主な加盟会社
- 株式会社アイロム
- 株式会社アレグロ
- 株式会社イノベイションオブメディカルサービス
- 株式会社EPLink
- インクロム株式会社
- 株式会社ウェルビー
- クリニプロ株式会社
- シミックヘルスケア・インスティテュート株式会社
- シーアールシージャパン株式会社
- 株式会社セキノサイトネット
- セーマ株式会社
- 株式会社東京臨床薬理研究所
- トライアドジャパン株式会社
- ノイエス株式会社
- 株式会社ピープロジェクト
- 株式会社ファルマ
- 株式会社プログレス
- YMGサポート株式会社
- 株式会社薬理研
日本で最も取得者が多いCRC認定資格です。資格は5年ごとに更新する必要があります。更新方法は、「公認CRC更新試験」を受験するか、協会が定めたSMAの研修会に参加して合計10ポイント以上を取得するかのいずれかです。
- 日本SMO協会 公認SMA
- 主催団体
- 日本SMO協会
- 資格認定試験名
- 日本SMO協会 SMA公認試験
- 受験資格
- 協会が定めるSMA導入教育研修を修了し、修了証を取得している
- 導入教育研修修了日より、2年以上のSMA実務経験を有する
- 試験内容
- 筆記試験
- 受験日
- 年1回
- 受験料
- 12,000円
- データ
- 累計合格者230人
SMAに専任で携わっている方向けのSMA試験です。資格は5年ごとに更新する必要があります。更新方法は、「公認SMA更新試験」を受験するか、協会が定めたCRCの研修会に参加して合計10ポイント以上を取得するかのいずれかです。
JASMO公認CRC・SMA合格者累計
※出典:日本SMO協会
JASMO公認CRCの比率
※日本SMO協会員のSMOに所属する全CRC数を100%とした場合
※出典:日本SMO協会
- 日本臨床薬理学会認定CRC
- 主催団体
- 日本臨床薬理学会
- 資格認定試験名
- 日本臨床薬理学会認定CRC試験
- 受験資格
- 専任CRC(CRCとして週38.75時間相当の勤務)として2年以上勤務している
- CRC としての活動実績を、所属長(病院長/医療機関の治験・臨床研究支援部門等の責任者)または参加した臨床研究チームの責任医師が証明できる
- 日本臨床薬理学会学術総会、当学会の指定するCRC養成研修会、CRCと臨床試験のあり方を考える会議などに一定数参加している
- 試験内容
- 筆記試験
- 受験日
- 年1回
- 受験料
- 20,000円
- データ
- 合格率7割
日本の権威ある学会が認定しており、研修ガイドラインや合格基準が明確です。スキルアップを目指すCRCにとって良い目標となっています。CRC認定資格の中で最も難しい資格と言われています。資格は5年ごとに更新する必要があります。更新方法は、学会が指定する研修を受講して100点以上を取得することです。
日本臨床薬理学会認定CRCの比率
※日本SMO協会員のSMOに所属する全CRC数を100%とした場合
※出典:日本臨床薬理学会
- CCRP (SoCRA)
- 主催団体
- Japan SoCRA Chapter
- 資格認定試験名
- SoCRA CCRP認定試験
- 累計合格者数
- 約1万名
- 受験資格
- CRC経験2年以上
アメリカに本拠地を置く非営利団体が運営している資格です。国際共同治験が本格化するに伴い、韓国や中国などではSoCRAの認定をアピールする施設が増えてきています。グローバル化の傾向として注目されている資格です。2015年から英語のみの試験となっており、グローバル色が強まっています。
- SMONA公認CRC
- 主催団体
- 協同組合臨床開発支援ネットワーク
- 資格認定試験名
- SMONA公認CRC試験
- 受験資格
- CRC経験が1年6ヶ月以上
- SMONA主催の基礎講座修了、GCPトレーニングおよびSMO各社毎に実施される自社内研修を修了し、規定のプロトコール数を満たした方
- 加盟会社
- 株式会社医療システム研究所
- イーサポート株式会社
- 日本癌治療学会 認定CRC
- 主催団体
- 日本癌治療学会
- 資格認定試験名
- 日本癌治療学会認定クリニカル・リサーチ・コーディネーター試験
- 受験資格
- 一定数の症例のデータマネージメント業務に従事していることなど(認定ジュニアCRC)
- 応募時点において認定ジュニアCRC の資格を有し,資格取得後3年の実務経験を有することなど(認定CRC)
- 試験内容
- 書類審査・面接
- 受験日
- 年1回
- 登録手数料
- 11,000円
抗がん剤の治験が増えるにつれて、その治験に必要な専門性も高まっています。日本癌治療学会は、この専門性を持ったCRCを育成するために、認定CRCの資格試験を実施しています。認定CRC制度は2014年に始まった新しい資格です。資格はジュニアCRC、CRC、シニアCRCの3段階に分かれており、それぞれのレベルに応じた試験を受ける必要があります。資格の有効期限は5年間です。
- 上級者臨床研究コーディネーター(CRC)
- 主催
- 厚生労働省
- 受講資格
- Basic(CRC経験3年以上6年未満)、Advance(CRC経験6年以上)、Master(管理職)
- 研修内容
- 臨床研究・治験実施医療機関において、医療機関における適性な臨床研究・治験の実施に寄与することを目的とした講義を受講する。
- 実施日
- 年1回
- 参加費用
- 無料
上級者CRCは、初級者CRCの指導や医師主導治験、国際共同治験・臨床試験などを行う際に生じる様々な課題に対処できる能力を持ちます。上級者CRCの育成は、医療機関での治験・臨床研究の円滑な実施と推進に貢献することを目的としています。
- CRAの資格はこちら
- CRAの資格
その他の資格一覧
- JSCTR認定 GCPパスポート
- 主催団体
- JSCTR(日本臨床試験学会)
- 資格認定試験名
- JSCTR認定 GCPパスポート試験
- 受験資格
- GCP(臨床試験・臨床研究)関連業務の経験が1年以上
- 会社・所属機関の導入研修受講修了者または GCP Basic Training セミナー受講修了
- 受験日
- 年2回
- 受験料
- 8,000円(会員)、10,000円(非会員)
- データ
- 3年の更新制
GCPパスポートは、臨床研究に関する倫理指針およびJ-GCPを十分に理解した人材を育成するために、JSCTR(日本臨床試験学会)が実施する試験です。臨床開発に必要な幅広い知識を問われる問題が出題されます。GCPパスポートの上位の認定制度として、指導者的な立場で臨床試験を実施できる人材を認定するGCPエキスパートがあります。
- JSCTR認定 GCPエキスパート
- 主催団体
- JSCTR(日本臨床試験学会)
- 資格認定試験名
- JSCTR認定 GCPエキスパート試験
- 受験資格
- 臨床試験および臨床研究関連業務の経験が5年以上
- JSCTR 認定 GCP パスポート、SoCRA(CCRP®)または ACRP(CCRC® ,CCRA®)認定者で、継続して資格を保持していること
- JSCTR正会員
- 受験日
- 年1回
- 受験料
- 20,000 円
- データ
- 3年の更新制
- 日本人類遺伝学会ゲノムメディカルリサーチコーディネーター(GMRC)
- 主催団体
- 日本人類遺伝学会
- 資格認定試験名
- 日本癌治療学会認定データマネージャー試験
- 受験資格
- 指定する講習会等への参加
- 試験内容
- マークシート試験
- 受験日
- 年1回
- 講習料
- 10,000円
- 受験料
- 5,000円
- 認定料
- 7,000円
日本人類遺伝学会は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究を中心に、インフォームド・コンセントを担当する可能性のある者に対して、「ゲノムメディカルリサーチコーディネーター (GMRC)」という名称で、その業務の基本となる教育の機会を提供し、認定する制度を設けています。
- 治験実務英語検定
- 主催団体
- 日本CRO協会
- 資格認定試験名
- 治験実務英語検定試験
- 受験資格
- 年齢・職業・学歴は問いません。 受験可能なインターネット環境、PCをお持ちの方であれば、どなたでも受験可能です。
- 試験内容
- 試験WebサイトからダウンロードしたMS-wordファイルに入力し、回答終了後に試験用Webサイトにアップロード
- 受験日
- 年数回
- 受験料
- 6,000~12,000円
医薬品開発業務に必要な英語スキルの向上を目的とした、国際共同治験などの実務上の英語力の指標となる治験実務英語検定試験です。Basic、Advanced、Professionalの3つのコースがあります。Advancedは、医薬品開発業務に関わる実務経験が1年以上かつTOEICが600点以上の者が受験する目安となっています。出題形式はリスニング、英文読解、短文英訳、長文英訳などです。試験の内容はCRA用とCRC用の2種類があります。
認定資格に関連する質問と回答
- Q
- CRC認定資格を取得すると転職に有利ですか?
- A
-
CRC認定資格を取得されて転職が有利なる方は、看護師や臨床検査技師などの医療関連の資格をお持ちでない方です。なぜなら、看護師や臨床検査技師などの医療関連の資格をお持ちでない方はCRC認定資格を取得されて初めて、治験の知識や経験があることを採用担当者に証明できるようになる場合が多いからです。
医療関連の資格とCRC認定資格のどちらもお持ちでない方は、医療の知識があることや職務経歴書に書かれている治験コーディネーター(CRC)としての実績が事実であることを、採用担当者に証明できない場合が多いです。なぜなら、職務経歴書に書かれている実績は誇張されていることがあるからです。
そのため、病院やSMOの採用担当者は、治験コーディネーター(CRC)の実務経験がある方であっても、医療関連の資格とCRC認定資格のどちらもお持ちでない方の採用に慎重になる傾向が見られます。また、医療関連の資格とCRC認定資格のどちらもお持ちでない方が治験に携わることを嫌がる医師もいらっしゃいます。
医療関連の資格をお持ちでない方がCRC認定資格を取得されると、治験コーディネーター(CRC)としての実務経験があることや、医療や治験の知識があることを採用担当者に証明できるようになります。また、治験を担当される医師に対しても一定の安心感を与えることができるなどの理由から、医療関連の資格をお持ちでない方がCRC認定資格を取得されると転職が有利になることになります。
逆に、看護師、薬剤師、臨床検査技師などの治験コーディネーター(CRC)になるのに相性が良いとされる医療関連の資格をお持ちの方は、CRC認定資格を取得されなくても医療知識があることを証明できるため、CRC認定資格を取得されても医療関連の資格をお持ちでない方ほど転職が有利になりません。
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◎CRC認定資格を取得すると転職が有利になる
医療関連の資格をお持ちでない方
○CRC認定資格を取得すると転職が少し有利になる
管理栄養士、栄養士、臨床工学技士、理学療法士、作業療法士、臨床心理士、MRなど
△CRC認定資格を取得しても転職があまり有利にならない
看護師、薬剤師、臨床検査技師、保健師など
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お勧めのCRC認定資格の種類は「日本SMO協会公認CRC」と「日本臨床薬理学会認定CRC」です。なぜなら、この2つが最も広く知られており、治験コーディネーター(CRC)の経験や知識があることを証明しやすいだけでなく、取得や更新費用の補助や資格手当を期待できるからです。
CRC認定資格を取得することのデメリットは、CRC認定資格を取得したり更新したりするときに、費用がかかるだけでなく、指定された研修へ参加するなどの一定の条件を満たすことを求められることです。
また、病院やSMOが推奨しているCRC認定資格と所持されているCRC認定資格が異なると、CRC認定資格の取得費用や更新費用を補助してもらえなかったり、資格手当が支給されないことが多いです。また、更新条件を満たせずCRC認定資格を手放すことになったり、別のCRC認定資格を習得しなおすことを求められる場合があるので気をつけましょう。
そうならないために、転職先の病院やSMOが推奨しているCRC認定資格の種類を調べてから、取得されるCRC認定資格を選ばれることをお勧めさせていただきます。必ずではありませんが、SMOは日本SMO協会の公認CRCを、病院は日本臨床薬理学会の認定CRCを推奨していることが多いです。
<類似の質問>
https://crc-bank.com/keijiban?gu=230
(CRC認定の資格手当の金額を教えて下さい)
<類似の記事>
https://crc-bank.com/crcnoshikaku#a2
(CRC認定資格とは?)
- Q
- CRC認定の資格手当の金額を教えて下さい。
- A
-
まず、CRC認定資格の種類ですが、「日本SMO協会公認CRC」と「日本臨床薬理学会認定CRC」の2つが有名です。他には癌の治験の専門性の向上を目指した「日本癌治療学会 認定CRC」や、GCPを十分に理解している証明になる「JSCTR認定 GCPパスポート」などが知られています。
以下の記事でも詳しく解説しています。
https://crc-bank.com/crcnoshikaku
(治験コーディネーター(CRC)の資格)
https://cra-bank.com/cranoshikaku
(CRA(臨床開発モニター)の資格)
そして、上記のようなCRC認定資格を取得された方について、一部のSMOや病院では3000~50000円/月の手当を支給しています。
例えば、SMO大手のEP綜合は5000円前後/月相当が月給に加算されます。他にも、シミックヘルスケア・インスティテュートは3000円前後/月、SMO中堅のクリニカルサポートは50000円前後/月、小規模SMOのプログレスは20000円前後/月、3HCTSは~5000円/月、セーマは5000円前後/月、東北薬理研は5000円前後/月、ファルマは3000円前後/月を支給しています。
また、CRC認定資格を受験するときには、1~2万円前後の受検料がかかります。そして、更新するときにも更新料がかかります。ですから、CRC認定資格の手当以外に受験料や更新料の費用も合わせて補助している病院やSMOも多く存在しています。
CRC認定資格を取得すれば、手当ももらえて、治験コーディネーター(CRC)の知識も増えますから、一粒で二度おいしいと言えます。
ただし、すでにCRC認定資格をお持ちの方は、働き始める前に資格の手当の有無と金額を確認されることをお勧めさせていただきます。
なぜなら、CRC認定資格の種類によって、手当の金額が変わったり、もらえなかったりする病院やSMOがあるからです。例えば、日本臨床薬理学会認定CRCを所持されていても、所属されている病院やSMOが日本SMO協会公認CRCの取得者のみにCRC認定資格の手当を支給している場合、残念ながら資格手当をもらうことができません。更新料も同じです。
CRC認定の資格手当がないSMOや病院が多く存在していることや、後日に資格手当がなくなる場合があることも知っておきましょう。